2023-05-14
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明治神宮外苑の再開発により、移転と建て替えが予定されている明治神宮野球場 Photo: Joshua Mellin / The New York Times
米紙も懸念「神宮外苑の再開発は、歴史的に重要なスタジアムを台無しにするだろう」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20230514-00000003-courrier-soci
明治神宮外苑の再開発について見直しを求める声が高まるなか、この件に海外からも注目が集まっている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は特に明治神宮野球場に着目し、歴史的・文化的価値のあるこの球場を失うとはどういうことかを明らかにしている。
東京の中心部にある明治神宮野球場は、およそ100年にわたり、数多くの重要なイベントの舞台となってきた。
ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグが日米野球でプレーし、小説家の村上春樹はこの球場で野球観戦をしていたときにデビュー作の着想を得た。2022年には、ヤクルトスワローズの村上宗隆が記録的なホームランをスタンドに打ち込んだばかりだ。
だが、大規模な再開発計画により、神宮球場は取り壊され、現代的な施設に建て替えられようとしている。この計画は、野球史ファンや日本ラグビーの歴史を重んじる人々、自然環境への影響を懸念する環境保護活動家など、さまざまな層から厳しい批判にさらされている。
神宮外苑地区は歴史的な緑地だ。「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が植樹に携わった、樹齢100年のイチョウ並木で知られる。
「ニューヨークのセントラルパークのど真ん中に、超高層ビルを建てるようなものです」。東京大学名誉教授の石川幹子は、この再開発計画についてAP通信にそう語った。「東京は魂を失うことになるでしょう」
その魂の一部が宿る神宮球場は、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場に次いで、日本で2番目に古い野球場だ。この2球場は、メジャーリーグの本拠地球場であるボストンのフェンウェイ・パークやシカゴのリグレー・フィールドに匹敵する、日本プロ野球の本拠地球場でもある。
日本の野球史が刻まれてきた場所
再開発計画では、神宮球場と隣接する秩父宮ラグビー場(1947年開場、1964年の東京五輪ではサッカーの会場として使用された)が順次解体される予定だ。2つのスタジアムは、場所を入れ替えて新たに建設される。
このプロジェクトが目指すのは、老朽化が著しい各施設を最新のものに変え、スタジアム間を移動しやすくなるように整備することだ。オープンスペースも増設・拡大される予定で、観光の拠点となり、人々がさまざまなスポーツイベントを楽しめる空間になることが期待されている。
高層ビルやホテルの建設も含めたプロジェクト全体は、2036年までに完了する予定だ。
その年は、メジャーリーグのスター選手たちが神宮球場で5試合を戦った1934年から、およそ100年後にあたる。この年の日米野球で、ベーブ・ルースは通算13本のホームランを打って観客を魅了したが、うち5本は神宮球場で放たれたものだ。
この日米戦は、のちに日本プロ野球界に君臨する読売ジャイアンツの結成につながるなど、その影響はいまなお感じ取ることができる。
それから44年後、神宮球場の外野席でビールを飲みながら野球観戦をしていた村上春樹は、「バットが速球をジャストミートする鋭い音」にインスパイアされ、帰宅途中にペンと紙を買い、すぐさま小説『風の歌を聴け』を書きはじめた。
そして2022年、ヤクルトスワローズの村上宗隆はこの球場でシーズン56本目の本塁打を放ち、王貞治の持つ日本人選手のシーズン最多記録を更新し、歴史に名を刻んだ。
再開発が自然に与える影響
球場の歴史以外の面でも、再開発計画は懸念を呼んでいる。というのも、新球場は毎年秋に祭りが開かれる、樹齢100年を超える見事なイチョウ並木のすぐそばに建てられる予定なのだ。
「神宮外苑地区まちづくり」のウェブサイトには、「4列のいちょう並木を保全し、聖徳記念絵画館を臨む見通しの良い美しい景色を後世に継承します」と書かれている。
しかし、文化遺産の保存に携わる専門家で構成される「日本イコモス国内委員会」は、再開発計画がイチョウ並木に適切に対処しておらず、この問題に関する科学的データも提供されていないと指摘する。…
続きはソース参照
Joshua Mellin
明治神宮外苑の再開発により、移転と建て替えが予定されている明治神宮野球場 Photo: Joshua Mellin / The New York Times
米紙も懸念「神宮外苑の再開発は、歴史的に重要なスタジアムを台無しにするだろう」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20230514-00000003-courrier-soci
明治神宮外苑の再開発について見直しを求める声が高まるなか、この件に海外からも注目が集まっている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は特に明治神宮野球場に着目し、歴史的・文化的価値のあるこの球場を失うとはどういうことかを明らかにしている。
東京の中心部にある明治神宮野球場は、およそ100年にわたり、数多くの重要なイベントの舞台となってきた。
ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグが日米野球でプレーし、小説家の村上春樹はこの球場で野球観戦をしていたときにデビュー作の着想を得た。2022年には、ヤクルトスワローズの村上宗隆が記録的なホームランをスタンドに打ち込んだばかりだ。
だが、大規模な再開発計画により、神宮球場は取り壊され、現代的な施設に建て替えられようとしている。この計画は、野球史ファンや日本ラグビーの歴史を重んじる人々、自然環境への影響を懸念する環境保護活動家など、さまざまな層から厳しい批判にさらされている。
神宮外苑地区は歴史的な緑地だ。「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が植樹に携わった、樹齢100年のイチョウ並木で知られる。
「ニューヨークのセントラルパークのど真ん中に、超高層ビルを建てるようなものです」。東京大学名誉教授の石川幹子は、この再開発計画についてAP通信にそう語った。「東京は魂を失うことになるでしょう」
その魂の一部が宿る神宮球場は、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場に次いで、日本で2番目に古い野球場だ。この2球場は、メジャーリーグの本拠地球場であるボストンのフェンウェイ・パークやシカゴのリグレー・フィールドに匹敵する、日本プロ野球の本拠地球場でもある。
日本の野球史が刻まれてきた場所
再開発計画では、神宮球場と隣接する秩父宮ラグビー場(1947年開場、1964年の東京五輪ではサッカーの会場として使用された)が順次解体される予定だ。2つのスタジアムは、場所を入れ替えて新たに建設される。
このプロジェクトが目指すのは、老朽化が著しい各施設を最新のものに変え、スタジアム間を移動しやすくなるように整備することだ。オープンスペースも増設・拡大される予定で、観光の拠点となり、人々がさまざまなスポーツイベントを楽しめる空間になることが期待されている。
高層ビルやホテルの建設も含めたプロジェクト全体は、2036年までに完了する予定だ。
その年は、メジャーリーグのスター選手たちが神宮球場で5試合を戦った1934年から、およそ100年後にあたる。この年の日米野球で、ベーブ・ルースは通算13本のホームランを打って観客を魅了したが、うち5本は神宮球場で放たれたものだ。
この日米戦は、のちに日本プロ野球界に君臨する読売ジャイアンツの結成につながるなど、その影響はいまなお感じ取ることができる。
それから44年後、神宮球場の外野席でビールを飲みながら野球観戦をしていた村上春樹は、「バットが速球をジャストミートする鋭い音」にインスパイアされ、帰宅途中にペンと紙を買い、すぐさま小説『風の歌を聴け』を書きはじめた。
そして2022年、ヤクルトスワローズの村上宗隆はこの球場でシーズン56本目の本塁打を放ち、王貞治の持つ日本人選手のシーズン最多記録を更新し、歴史に名を刻んだ。
再開発が自然に与える影響
球場の歴史以外の面でも、再開発計画は懸念を呼んでいる。というのも、新球場は毎年秋に祭りが開かれる、樹齢100年を超える見事なイチョウ並木のすぐそばに建てられる予定なのだ。
「神宮外苑地区まちづくり」のウェブサイトには、「4列のいちょう並木を保全し、聖徳記念絵画館を臨む見通しの良い美しい景色を後世に継承します」と書かれている。
しかし、文化遺産の保存に携わる専門家で構成される「日本イコモス国内委員会」は、再開発計画がイチョウ並木に適切に対処しておらず、この問題に関する科学的データも提供されていないと指摘する。…
続きはソース参照
Joshua Mellin