2023-04-30
読売新聞2023/04/30 15:45
https://www.yomiuri.co.jp/hakone-ekiden/news/20230422-OYT1T50239/
2012年、日体大監督の別府健至さん(57)(現ロジスティード監督)は顔を覆いたくなる気持ちで運営管理車にいた。大学史上最低の19位。復路で繰り上げスタートとなり、初出場からつながっていたタスキが64年目で途切れる屈辱的な敗戦だった。沿道に大学を応援するのぼりを見つけるたび、悔しさと恥ずかしさが募った。
64年目で初の繰り上げスタート、監督「見返してやる」…2013年
東京・大手町のゴール付近。集合場所に向かう途中で鉢合わせした2年生の服部翔大さん(31)(現立正大コーチ)に伝えた。「お前が次のキャプテンだ」。直後のミーティングで、別府さんは主将を新3年生の服部さんが務める方針を全員に伝えた。
「これまで通り最上級生に」と訴える4年生もいた。しかし、別府さんは「何かを変えなければいけない中で、服部は一番の走力があり、言葉で周囲を引っ張れる。大敗で、周囲を見返してやるぞと腹をくくれた」。雪辱に向けた決断だった。
兵庫・西脇工高監督として全国高校駅伝を8度制した渡辺公二OBを特別強化委員長に招き、寮生活の細部から見直した。体によい食材にこだわり、トイレのスリッパをそろえ、「当たり前のこと」を徹底した。
服部翔大さん、チーム再建へ積極的に声かけ
服部さんはミーティングで監督の横から全体を観察し、自信がなさそうな選手には声をかけた。ストレスで円形脱毛症にもなったが、夏合宿から雰囲気が変わった。4年生が率先して声を出し、控えを含めた全員が練習に集中し始めた。「4年生が支えてくれ、チームを何とか再建するという意志が浸透した」と服部さん。
別府さんも変化を感じていた。秋の予選会では故障明けの服部さんが引っ張り、トップ通過。12月の伊豆大島合宿では道路に波しぶきが飛ぶ強風下で30キロを走り抜いた。別府さんは「登録メンバーの16人だけでなく全員が走れる状態。これで優勝できなければ辞める」。そう決意するほどチームの仕上がりに自信を抱いた。
強風下の伊豆大島合宿、向かい風の本番で生きる
その鍛錬が箱根で実る。往路は強烈な向かい風が吹き荒れる悪条件。5区の服部さんが東洋大に続く2位で走り出すと、1分49秒差を逆転して26年ぶりの往路優勝。全区間で区間賞は服部さんだけだったが、復路も安定した走りで30年ぶり10度目の総合優勝を遂げた。
予選会からの総合優勝は1997年の神奈川大以来16年ぶり。前年19位からの頂点は、途中棄権から優勝した97年の神奈川大を除けば、過去にない下克上となった。別府さんは「何くそ、という思いが人間にとって一番大きいと感じた」。実力校の復活劇は、反骨心から生まれた。(第4部おわり、佐藤謙治)
https://www.yomiuri.co.jp/hakone-ekiden/news/20230422-OYT1T50239/
2012年、日体大監督の別府健至さん(57)(現ロジスティード監督)は顔を覆いたくなる気持ちで運営管理車にいた。大学史上最低の19位。復路で繰り上げスタートとなり、初出場からつながっていたタスキが64年目で途切れる屈辱的な敗戦だった。沿道に大学を応援するのぼりを見つけるたび、悔しさと恥ずかしさが募った。
64年目で初の繰り上げスタート、監督「見返してやる」…2013年
東京・大手町のゴール付近。集合場所に向かう途中で鉢合わせした2年生の服部翔大さん(31)(現立正大コーチ)に伝えた。「お前が次のキャプテンだ」。直後のミーティングで、別府さんは主将を新3年生の服部さんが務める方針を全員に伝えた。
「これまで通り最上級生に」と訴える4年生もいた。しかし、別府さんは「何かを変えなければいけない中で、服部は一番の走力があり、言葉で周囲を引っ張れる。大敗で、周囲を見返してやるぞと腹をくくれた」。雪辱に向けた決断だった。
兵庫・西脇工高監督として全国高校駅伝を8度制した渡辺公二OBを特別強化委員長に招き、寮生活の細部から見直した。体によい食材にこだわり、トイレのスリッパをそろえ、「当たり前のこと」を徹底した。
服部翔大さん、チーム再建へ積極的に声かけ
服部さんはミーティングで監督の横から全体を観察し、自信がなさそうな選手には声をかけた。ストレスで円形脱毛症にもなったが、夏合宿から雰囲気が変わった。4年生が率先して声を出し、控えを含めた全員が練習に集中し始めた。「4年生が支えてくれ、チームを何とか再建するという意志が浸透した」と服部さん。
別府さんも変化を感じていた。秋の予選会では故障明けの服部さんが引っ張り、トップ通過。12月の伊豆大島合宿では道路に波しぶきが飛ぶ強風下で30キロを走り抜いた。別府さんは「登録メンバーの16人だけでなく全員が走れる状態。これで優勝できなければ辞める」。そう決意するほどチームの仕上がりに自信を抱いた。
強風下の伊豆大島合宿、向かい風の本番で生きる
その鍛錬が箱根で実る。往路は強烈な向かい風が吹き荒れる悪条件。5区の服部さんが東洋大に続く2位で走り出すと、1分49秒差を逆転して26年ぶりの往路優勝。全区間で区間賞は服部さんだけだったが、復路も安定した走りで30年ぶり10度目の総合優勝を遂げた。
予選会からの総合優勝は1997年の神奈川大以来16年ぶり。前年19位からの頂点は、途中棄権から優勝した97年の神奈川大を除けば、過去にない下克上となった。別府さんは「何くそ、という思いが人間にとって一番大きいと感じた」。実力校の復活劇は、反骨心から生まれた。(第4部おわり、佐藤謙治)