2023-05-03
2023年5月1日 06時00分
米国のラーム・エマニュエル駐日大使が、LGBTQなど性的少数者の人権保障をテーマに、本紙の単独取材に応じた。先進7カ国(G7)で唯一、差別禁止を定めた法律がなく、同性婚を認めていない日本に対して「早期に法律を制定すべきだ」と強調。法整備に向けた一歩として、与野党が国会提出を目指している理解増進法案の成立に期待感を示した。(柚木まり)
ラーム・エマニュエル 米中西部イリノイ州シカゴ出身。1993〜98年にクリントン政権で政策・政治担当の大統領上級顧問、2009〜10年にオバマ政権で大統領首席補佐官を務めた。02〜08年連邦下院議員。11〜19年のシカゴ市長在任中、イリノイ州の同性婚法制化など、LGBTQの人権擁護政策に尽力した。バイデン政権で駐日大使に指名され、21年12月に米議会で承認された。家族は妻と子ども3人。
◆名古屋、札幌で先行事例「地方行政が国政を変える」
エマニュエル氏は、LGBTQ保護法制が必要な理由について「政策は全ての人の価値観を保障し、心強く感じられる社会をつくるためにある。人々を排除するような社会が、力強い未来を築くことなどできるはずがない」と説明した。米国は約30年かけ、段階的に人権保障の制度を充実させてきたと指摘。日本で理解増進法案の議論が停滞していることには直接言及せず、「一つ一つの変化は単発ではなく、その後につながっている」と述べ、前向きな取り組みを促した。
名古屋など地方自治体で同性カップルと証明するパートナーシップ制度が広がっていることを評価。米国では自身が市長を務めたシカゴをはじめ、地方自治体が先行してLGBTQ関連施策に取り組んだ結果、国レベルの政策が変わったことを引き合いに「全ての自治体の政策決定が草の根のうねりをつくる。地方行政が国政を変える」と力説した。
岸田文雄首相の秘書官が2月に差別発言で更迭された後、日本を除くG7の6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使の連名でLGBTQ保護のための法整備を促す首相宛ての書簡をまとめたことに関しては「たとえ送られたとしても私信だ」と明言を避けた。
取材は4月23日、エマニュエル氏を含む各国大使やLGBTQ当事者らが参加して、東京都内で開かれたイベント「東京レインボープライド」の会場で行った。
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パートナーシップ制度 同性婚を法制化していない日本で、自治体が同性カップルなどを「パートナー」と公認し、独自の証明書を発行する制度。2015年に東京都渋谷区と世田谷区が初導入し、全国に拡大した。法的拘束力はないが、公営住宅に家族として入居できたりする利点がある。当事者を支援する認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」と渋谷区の調査では、今年1月10日時点で全国の255自治体が導入し、人口カバー率は65.2%。
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◆一つ一つの変化は単発ではなく、その後につながる
https://www.tokyo-np.co.jp/article/247255
米国のラーム・エマニュエル駐日大使が、LGBTQなど性的少数者の人権保障をテーマに、本紙の単独取材に応じた。先進7カ国(G7)で唯一、差別禁止を定めた法律がなく、同性婚を認めていない日本に対して「早期に法律を制定すべきだ」と強調。法整備に向けた一歩として、与野党が国会提出を目指している理解増進法案の成立に期待感を示した。(柚木まり)
ラーム・エマニュエル 米中西部イリノイ州シカゴ出身。1993〜98年にクリントン政権で政策・政治担当の大統領上級顧問、2009〜10年にオバマ政権で大統領首席補佐官を務めた。02〜08年連邦下院議員。11〜19年のシカゴ市長在任中、イリノイ州の同性婚法制化など、LGBTQの人権擁護政策に尽力した。バイデン政権で駐日大使に指名され、21年12月に米議会で承認された。家族は妻と子ども3人。
◆名古屋、札幌で先行事例「地方行政が国政を変える」
エマニュエル氏は、LGBTQ保護法制が必要な理由について「政策は全ての人の価値観を保障し、心強く感じられる社会をつくるためにある。人々を排除するような社会が、力強い未来を築くことなどできるはずがない」と説明した。米国は約30年かけ、段階的に人権保障の制度を充実させてきたと指摘。日本で理解増進法案の議論が停滞していることには直接言及せず、「一つ一つの変化は単発ではなく、その後につながっている」と述べ、前向きな取り組みを促した。
名古屋など地方自治体で同性カップルと証明するパートナーシップ制度が広がっていることを評価。米国では自身が市長を務めたシカゴをはじめ、地方自治体が先行してLGBTQ関連施策に取り組んだ結果、国レベルの政策が変わったことを引き合いに「全ての自治体の政策決定が草の根のうねりをつくる。地方行政が国政を変える」と力説した。
岸田文雄首相の秘書官が2月に差別発言で更迭された後、日本を除くG7の6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使の連名でLGBTQ保護のための法整備を促す首相宛ての書簡をまとめたことに関しては「たとえ送られたとしても私信だ」と明言を避けた。
取材は4月23日、エマニュエル氏を含む各国大使やLGBTQ当事者らが参加して、東京都内で開かれたイベント「東京レインボープライド」の会場で行った。
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パートナーシップ制度 同性婚を法制化していない日本で、自治体が同性カップルなどを「パートナー」と公認し、独自の証明書を発行する制度。2015年に東京都渋谷区と世田谷区が初導入し、全国に拡大した。法的拘束力はないが、公営住宅に家族として入居できたりする利点がある。当事者を支援する認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」と渋谷区の調査では、今年1月10日時点で全国の255自治体が導入し、人口カバー率は65.2%。
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◆一つ一つの変化は単発ではなく、その後につながる
https://www.tokyo-np.co.jp/article/247255