2023-05-20
ダウン症の俳優をメインキャストに抜てき あるドラマの挑戦
2023年5月17日 11時45分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/k10014067761000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/K10014067761_2305161051_0516123647_01_03.jpg
ドラマや映画では、時折障害のある役柄の人が出てきます。
車いすを使う人や、耳が聞こえない人、目が見えない人、知的障害がある人。
これまで、その多くは健常者の俳優たちが演じてきました。
しかし今、ある変化が起き始めています。
それは「障害のある役をその当事者が演じる」ということ。
ダウン症の俳優をメインキャストに起用した、あるドラマの挑戦を追いました。
(おはよう日本 ディレクター 植村優香)
◆豪華キャストの中に… ダウン症の新人俳優が!
報道局でディレクターをしていて、ドラマの制作とは無縁の私は、あるドラマのキャストの発表を見て驚きました。
メインキャストにダウン症の俳優が起用されていたからです。
ドラマは、5月14日に放送が始まったNHKBSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。
作家・岸田奈美さんが自身の「家族」を描いた人気エッセーを原作にした、全10話の連続ドラマです。
起用されたのは、主人公・岸本七実のダウン症の弟、草太役を演じる、16歳の吉田葵さんです。
オーディションを通して選ばれ、本格的なテレビドラマは今回初出演だといいます。
◆障害のある“当事者”からキャスティング
なぜ彼を起用することになったのか。
ドラマの演出を担う、大九明子さんに話を聞きました。
「原作のエッセーにそれぞれのキャラクターとして実在する人たちがいて、その一人として主人公の弟がダウン症であることが大きな軸になっているので、ここはまず絶対に描きたいと。それをやるときに、当事者である人が演じるか、そうでない人が演じるかということは迷いなく、当事者にというところがありました」
原作の岸田奈美さんのエッセーは、車いすの母、ひろ実さんとダウン症の弟、良太さんとの日々が描かれています。
その中には、ダウン症の弟とだからこそ生まれたエピソードもあります。
大九さんは、同じ障害のある葵さんにだからこそ演じられる「草太」を作りたかったのです。
◎吉田葵さん
「ドラマが決まって、最初は心臓が止まるくらいエッてなりました。ドラマに参加できてうれしいです」
◆現場では俳優による専属サポートが
撮影現場にお邪魔すると、名だたる俳優たちに囲まれて演じる、吉田葵さんの姿がありました。
時折、大九さんは「草太くんだったらこういう時どうする?」と葵さんに投げかけます。
そして、葵さんのそのままの姿を次々に演出にとりこんでいきます。
その葵さんの横に付き添い、大九さんからの指示をフォローしている男性がいました。
今回、葵さんのサポート役に抜てきされた、俳優の安田龍生さんです。
左:安田龍生さん
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/K10014067761_2305161052_0516123647_01_06.jpg
プロの俳優として、演出の意図を踏まえて葵さんを支えてもらうことがねらいです。
しかし、安田さんにとってもサポート役は初めての経験です。
現場では探り探りで支える方法を見つけています。
(※中略)
◎安田龍生さん
「葵は5個くらいまでなら覚えられるってことがだんだんわかってきたので、だいたい5個くらいまでにポイントを入れるようにして説明しています。最近、芝居がうまくなってきたんですが、動作のきっかけとなる“気づき”のような芝居ができていないので、そうしたことができるようポイントを項目にして書き入れるようにしています」
ほかのキャストたちは、葵さんとの共演をどのように感じているのでしょうか。
◎河合優実さん(草太の姉・七実役)
「最初は、ダウン症の方と面と向かって話したこともなかったし、もちろん芝居をしたこともなくて、一枚構えるフィルターはあったんですが、会って最初の数秒でなくなりました。楽しいと思ったことや憧れているものに100%エネルギーが向かっていて、その純粋さは刺激になりましたし、大人が正解で葵くんが間違っているわけじゃないっていうのをなんとか伝えたいしそういう風にお芝居したい」
2023年5月17日 11時45分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/k10014067761000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/K10014067761_2305161051_0516123647_01_03.jpg
ドラマや映画では、時折障害のある役柄の人が出てきます。
車いすを使う人や、耳が聞こえない人、目が見えない人、知的障害がある人。
これまで、その多くは健常者の俳優たちが演じてきました。
しかし今、ある変化が起き始めています。
それは「障害のある役をその当事者が演じる」ということ。
ダウン症の俳優をメインキャストに起用した、あるドラマの挑戦を追いました。
(おはよう日本 ディレクター 植村優香)
◆豪華キャストの中に… ダウン症の新人俳優が!
報道局でディレクターをしていて、ドラマの制作とは無縁の私は、あるドラマのキャストの発表を見て驚きました。
メインキャストにダウン症の俳優が起用されていたからです。
ドラマは、5月14日に放送が始まったNHKBSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。
作家・岸田奈美さんが自身の「家族」を描いた人気エッセーを原作にした、全10話の連続ドラマです。
起用されたのは、主人公・岸本七実のダウン症の弟、草太役を演じる、16歳の吉田葵さんです。
オーディションを通して選ばれ、本格的なテレビドラマは今回初出演だといいます。
◆障害のある“当事者”からキャスティング
なぜ彼を起用することになったのか。
ドラマの演出を担う、大九明子さんに話を聞きました。
「原作のエッセーにそれぞれのキャラクターとして実在する人たちがいて、その一人として主人公の弟がダウン症であることが大きな軸になっているので、ここはまず絶対に描きたいと。それをやるときに、当事者である人が演じるか、そうでない人が演じるかということは迷いなく、当事者にというところがありました」
原作の岸田奈美さんのエッセーは、車いすの母、ひろ実さんとダウン症の弟、良太さんとの日々が描かれています。
その中には、ダウン症の弟とだからこそ生まれたエピソードもあります。
大九さんは、同じ障害のある葵さんにだからこそ演じられる「草太」を作りたかったのです。
◎吉田葵さん
「ドラマが決まって、最初は心臓が止まるくらいエッてなりました。ドラマに参加できてうれしいです」
◆現場では俳優による専属サポートが
撮影現場にお邪魔すると、名だたる俳優たちに囲まれて演じる、吉田葵さんの姿がありました。
時折、大九さんは「草太くんだったらこういう時どうする?」と葵さんに投げかけます。
そして、葵さんのそのままの姿を次々に演出にとりこんでいきます。
その葵さんの横に付き添い、大九さんからの指示をフォローしている男性がいました。
今回、葵さんのサポート役に抜てきされた、俳優の安田龍生さんです。
左:安田龍生さん
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/K10014067761_2305161052_0516123647_01_06.jpg
プロの俳優として、演出の意図を踏まえて葵さんを支えてもらうことがねらいです。
しかし、安田さんにとってもサポート役は初めての経験です。
現場では探り探りで支える方法を見つけています。
(※中略)
◎安田龍生さん
「葵は5個くらいまでなら覚えられるってことがだんだんわかってきたので、だいたい5個くらいまでにポイントを入れるようにして説明しています。最近、芝居がうまくなってきたんですが、動作のきっかけとなる“気づき”のような芝居ができていないので、そうしたことができるようポイントを項目にして書き入れるようにしています」
ほかのキャストたちは、葵さんとの共演をどのように感じているのでしょうか。
◎河合優実さん(草太の姉・七実役)
「最初は、ダウン症の方と面と向かって話したこともなかったし、もちろん芝居をしたこともなくて、一枚構えるフィルターはあったんですが、会って最初の数秒でなくなりました。楽しいと思ったことや憧れているものに100%エネルギーが向かっていて、その純粋さは刺激になりましたし、大人が正解で葵くんが間違っているわけじゃないっていうのをなんとか伝えたいしそういう風にお芝居したい」